導入事例

三菱地所に聞く「LabBase X」の価値――ディスラプターに勝ち、イノベーションを推進するカギは産学連携にあり

2019年3月に正式リリースされた「LabBase X(ラボベース クロス)」は、企業と研究機関の協業「産学連携」を推進する、POLの新サービスだ。そのサービスを利用し、成果を実感しているのが、大手不動産ディベロッパー・三菱地所。三菱地所でデジタル・トランスフォーメーションを担う石井謙一郎氏と、POLのCEO加茂倫明氏に、産学連携を取り巻く環境や実際の成功事例、LabBase Xをリリースした真の目的について伺った。

石井 謙一郎氏
DX推進部 主事。ラ・サール高校、東京大学工学部システム創成学科卒。2008年4月に入社後、ビル運営事業部、物流施設事業部、中国語語学研修生派遣、経営企画部を経て2019年4月より現職。

加茂倫明氏
株式会社POL代表取締役。東京大学工学部3年生。「研究の未来を加速させる」をビジョンに、LabBaseなど複数の事業を進めている。

産学連携はデジタル・ディスラプターに対抗できる有効手段

――まずは、2019年3月にPOLが正式リリースした「LabBase X(ラボベース クロス)」について、簡単にご説明いただけますか。

加茂

LabBase Xは、産学連携を支援するナレッジプラットフォームです。近年の日本企業では、既存事業のドライブや新規事業創造を目的として、大学の研究や技術を活用しようとするケースが増加しています。しかし多くの企業が、「ニーズにマッチする研究者を探すのが大変」「そもそもこの事業ニーズにどういう研究キーワードが該当するのか分からない」などの課題を抱えている状態です。

また、一方の研究者側も、企業との共同研究や対話の機会を希望する人は大勢いますが、機会に恵まれるのはごく一部の方のみ。この現状を打破するため、「LabBase X」をリリースしました。

――いわゆる「産学連携」に寄与するサービスですね。正式リリースから約1カ月が経過しましたが、利用する会員企業にはどのような傾向がありますか。

加茂

リリース当初は、元から研究開発に力を入れている企業が新たなマッチング先を求めて利用するケースを想定していたんです。しかしふたを開けてみたら、三菱地所さんのように一見研究者との出会いを求めていなさそうな企業や、研究開発や技術系のイメージのない企業からの引き合いが多くて驚きました。

話を聞いてみると、多くの企業がテクノロジーによって既存の業界に風穴を開ける存在「デジタル・ディスラプター」を脅威と捉えて、ビジョンの再定義や、新しい技術を取り入れて事業の再編成を考えているようでした。しかし、そのために必要な技術は何か、企業側のイメージが明確でないことも多いので、POLが道先案内人となって仲介しているんです。

――三菱地所さんは実際にLabBase Xを使っていらっしゃいます。サービスを利用し始めた経緯を教えていただけますか。

石井

三菱地所は1890年に東京駅と皇居に挟まれた丸の内エリアの土地を取得してスタートした、歴史の長い不動産会社です。屋台骨事業は、丸の内エリアを中心とする大規模複合ビルの開発・運営管理。

これ以外にも、住宅・商業施設・物流施設・ホテル・空港など、様々なタイプの不動産を国内外で取り扱っており、事業フィールドを拡大しています。

現在の業績は非常に好調で、2020年には史上最高益を達成する見込みです。ところが、不動産業界には2020年以降、ネガティブファクターが増え、正念場が訪れると予想されています。

例えば、少子高齢化等を背景に不動産市場全体がシュリンクすることや、WeWork・OYO等を代表とする、ITを武器にして不動産業に進出する「不動産テック企業」の台頭などです。

既存のビジネス一本足だけでは、先行きが明るいとは言えません。そこで、今までの不動産事業に捉われないビジネスモデル革新を起こし、お客様・社会に対して新たな価値提供を行う一つの手段として、産学連携を強化することにしたんです。

三菱地所の産学連携事例――成功のカギは「ゴール設定があるか」

――石井さんの所属するDX推進部がこの改革を推し進めていると伺っています。どのような方針で活動されているのでしょうか。

石井

三菱地所のコアバリューを再定義して顧客への価値提供を見直しているのが、DX推進部です。今までの三菱地所が行なってこなかった取り組みであっても、顧客・社会に求められることは何でもチャレンジする方針ですね。

不動産業に関してはプロと自負していますが、自分たちだけで実現できることは限られています。様々な領域の知見やノウハウ・技術シーズを持っている外部の方々と組んで、新しい価値を生み出そうとしています。

不動産はトラディショナルな業界なので、どうしても自前主義になりがち。そこを打破して、企業や業界の垣根を越えることで、新しい柱となる事業を立ち上げたいと思っています。   

――今まで他社や大学などと協業した中で、成功した事例を教えていただけますか。

石井

社会実装はこれからですが、手応えを感じている事例として、2つあげさせて頂きます。ひとつは、ソフトバンクとトヨタ自動車が立ち上げた合弁会社・MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)と協業した「オンデマンド通勤シャトル」の実証実験です。

豊洲や吉祥寺など、丸の内エリアに電車だけで通勤するのが若干不便なエリアや、満員電車で疲弊しがちな地域に住む就業者やワーキングパパ・ママを対象に、家の近くからオンデマンドバスに乗り、丸の内エリアにあるオフィスまで通勤してもらいました。予約は事前にアプリでできます。

このバスはWi-Fiなどの仕事環境が整っている「移動オフィス」なので、通勤という無駄な時間を仕事に当てられるんですね。今まで他社と協業したモデルはなかったですし、不動産業の枠を超える取り組みには大きな反響がありました。メリットを感じるユーザーが多ければ新しい事業・キャッシュポイントになり得るので、この結果を今後に生かしていきます。 

――もうひとつは、どのようなプロジェクトでしょうか。

石井

立命館大学と締結した「戦略的DXパートナーシップ協定」による、ロボティクス領域の共同プロジェクトです。今年の3月に締結し、現在進行形で動いています。不動産とロボティクス領域は親和性が高いです。人件費が高騰している中で、建物の施設管理に必要な清掃業務・警備業務は、ロボットの活用による効果が出やすい業務といえます。

三菱地所では従前より多種多様なロボットで実証実験・社会実装を行っているので、そのノウハウを立命館大学のキャンパスを舞台に活用する検討・研究を進めています。ノウハウを自社に閉じ込めておく風潮を打破して、どんどん外向きに展開していき、少子高齢化による人材不足などの社会問題を自立型ロボットの導入によって解決するのが大きな目的ですね。 

――順調に進んでいるようですね。逆に、うまくいかなかった事例あれば教えてください。

石井

ゴールが不明確で失敗したケースは結構ありますよ。AIを使って何かやろう、などと手段が先に来る状態だと、成功しにくいですね。

ハイテクな技術があっても使いこなせなかったり、顧客・社会要請にマッチしていなかったりすると意味がないです。必要な技術を目利きできる力を自社で持つ必要があるでしょう。技術が先行しそうなときほど原点に立ち返り、顧客目線でサービスを考えることも重要ですね。

LabBase Xは企業と研究者をつなぐ「触媒」

――LabBase Xを利用した場合、具体的にはどのようなサービスを受けられるのでしょうか。

加茂

LabBase Xを利用する企業の多くは、「自社にノウハウのない分野」の理解を深め、研究者と共創したいというニーズを抱えています。研究開発に力を入れている企業でも、メインドメインを外れると自社にノウハウがないため、分野自体の理解が難しかったり、ましてやどの研究者がベストパートナーなのかを探すのは困難です。

LabBase Xでは、POLが企業の担当者様と面談を重ねながら、理解を促進するための分野や技術の俯瞰マップを提供したり、研究者の生の声を元にしてその企業に一番マッチする研究者を提案したりしています。

研究者側も、POLが信頼関係を築きながらヒアリングすると、まだ外に出していない最新の研究について教えてくれることがあります。企業と研究者の双方と密にコミュニケーションを取っていくことで、互いの条件や希望をブラッシュアップし、より相性の良いマッチングを実現するよう努めています。

――石井さんが実際にLabBase Xを利用してみた感想はいかがですか?

石井

加茂さんの言う通り、研究者側がいい技術を持っているけれど使い道が分からなかい、それでも売り込みたいという話は聞きます。眠っている状態の技術シーズと企業の実現したい世界観を上手にマッチングできると、新しい未来が開けるでしょう。POLさんはその「触媒」として、重要な役割を果たしていると思います。

加茂

触媒!いい表現ですね。

石井

私は技術者ではないので、誰かに補完してほしいんですよね。POLさんがその補完役として、一緒に深く考察してくれるところが、LabBase Xを活用するメリットだと思います。

――LabBase X以外で、POLが行っている産学連携事業はありますか?

加茂

理系学生向けキャリアサービス「LabBase」には1万人以上の理系学生が登録しているのですが、そのうち400人ほどの博士過程の学生に調査を依頼できるクラウドサービスも展開しています。

例えば「これを実現できる研究/技術を探してサマライズしてほしい」「この技術の活用方法を考えてほしい」などという依頼に対して、各分野の専門家が回答するという、集合知のような組織です。

また、各界のトップレベルの研究者と企業経営者の方にお声がけして、少人数で会食をするアカデミックサロン的な機会も設けています。今後発展するテクノロジーの内容や、それによって社会がどう変化するかなど、熱い情報交換をする場になっていますよ。

知見の最先端は大学の研究者が持っているので、POLがそこにリーチし、企業側まで持ってくることも使命だと思っています。

――では最後に、これから産学連携に取り組もう、LabBase Xを利用しようと考えている企業にメッセージをお願いします。

石井

大学の研究室は、まだ世に出ていない優れた技術がたくさん埋まっている「宝の山」。一方の企業側にも、リアルなオフラインデータが多く眠っています。これを活用し合うことで、企業の需要や社会の課題を共に解決することができるでしょう。

企業から金銭的なサポートを受けることで、研究のモチベーションが上がる可能性は高いと思います。産学連携によって、基礎研究が進んで学生の質も上がり、社会全体が良くなるという好循環を生み出していきたいですね。

加茂

私たちはLabBase Xを通じて、企業と研究者の間にある溝を埋め、最先端の研究や技術が社会に大きく価値を発揮する機会をより増やしていきたいと思っています。

新技術を掛け合わせて既存事業を大きくドライブさせたい企業や、特定の技術をベースに新規事業を構築していきたい企業には、必要な技術の洗い出しからベストパートナーとなる研究者の提案まで広くお力添えします。ぜひLabBase Xを利用していただけたらうれしいです!

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